いつもお風呂に入る順番は決められている。柿ぴ、私、犬ちゃん、骸さん。絶対このサイクルは崩れない。なぜこの順番かというと、 二人の間で私が風呂に入らないと、絶対に骸さんが覗きにくるからだ。別に覗くくらいなら私がぼこぼこにしちゃうから問題ないのだけれど、 それを手当てする柿ぴの手間があるので、結局この順番に落ち着いている。 お風呂から上がった人は次の人を呼びに行くというシステムになっているので必然的に私が呼びに行くのは犬ちゃん、なのだが。 その肝心の犬ちゃんは今日はさっきシャワーを浴びた、とシャンプーでふわふわになった髪の毛を揺らして言っていたので、今日ばかりは骸さんを呼びに行くことになった。 しかし今日は世界ふしぎ発見のスペシャルをみんなで見てしまったので時間がだいぶ押した。いつもは結構お風呂の時間が長い柿ぴも、今日ばかりは結構早かった。 それを見ると私もなんとなく早くしなきゃいけない気がして、いつもは念入りに塗るトリートメントも今日は塗らないで、いつもはブローとかして20分以上かかる髪の毛も乾かしさえせずに骸さんを呼びに行った。 柿ぴも私も早くした理由は、骸さんがあんなえげつない術を使うわりに、遅い時間のお風呂を怖がるからである。私はかなり急いだおかげで、11時半にはなんとか彼を呼びにいくことができた。 「骸さーん、お風呂空きました」 「お、遅いです、も千種も!こんな時間に入ったら一体何が出るか…!!」 「何も出ませんよ」 「でます、」 よ、と言ったところで骸さんの視点が私を見て止まった。私はあまりずっと見られるのもいいものではないのでなんですか、と声をかける。 そこでやっと我に帰った骸さんは、はっとした顔をしてすぐ顔を赤らめて視点をそらした。 「何なんですか、気持ち悪い」 「き、気持ち悪いとはなんですか!」 「気持ち悪いですよ、人のことじろじろと見て」 なっ、と声を上げた骸さんはそこから口ごもってとにかく僕はお風呂に入ってきますから!となぜか大きな声をあげて私の隣を足早に通り過ぎてお風呂へ続く廊下を歩いていった。 なんなんだろう。 今日は風呂に入る順番が違う。いつもは僕を呼びにくる犬が今日は先にシャワーを済ませていたので、今日僕を呼びに来るのは必然的にとなる。 隙あらば襲ってしまおうか、なんてバカみたいなことを考えながら時間が過ぎるのを待つ。さっきお茶を飲みに行ったときに千種がいたから、きっと今はが入っている。 早く呼びにこないかとそわそわしながら何度も時計を見る。が呼びに来ることを楽しみしているというのもあるけれど、それ以上に夜が更けた風呂場は怖い。 いつもえげつないことしてるくせに、とによくバカにされるが、怖いものは怖いのだ。仕方ない。 時計が11時半を指したあたりにが僕の部屋のドアをノックして間の抜けた声で僕を呼んだ。僕はベッドの上から立ち上がり、着替えを持ってドアへ向かう。 そして少し文句を言って、初めてまともに彼女を見る。よほど急いできたのか、髪の毛は濡れたままで、その毛先からは水がまだ滴っていた。 寝巻きはそこだけが濡れていて、ちょうど胸元が透けて見えそうな感じでなんというか、すごく色めかしかった。 普段、男のように竹を割ったような性格をしている彼女だから、余計にその色めかしい姿が映えて、ついさっきまで襲ってやろうとか考えていた自分の頭はパンクしそうになっていた。 多分今、顔は真っ赤だろう。自分でも顔に熱があるのがわかるのだ。目の焦点があっていなかったからか、のなんですか、という声が聞こえる。 そこでやっと我に帰って、どうすればいいかわからなくなり、目をそらした。 その後一言二言くらい言葉を交わしたところで、彼女の姿に耐えれなくなって足早に彼女の元から去ってしまった。 きっと自覚していないのだろう。言えるものなら言いたい。 反則だ。 |