クリスマスイヴ。
別に何もすることがないって言ったら変だけど、別にすることがなかったからの家に行った。 いらっしゃーいなんて間抜けな声がして、次に手が離せないから勝手にあがってーという声がした。 なんていうか、近所迷惑だ。声がでかい。 でもこれがいつも通りであって、別に近所迷惑だとか今更考えてもなぁと少しだけ苦笑した。




「…何してんの」
「いらっさーい」
「いやだから「ケーキ作り」
「…(人の言葉にかぶせやがって)」
「へーちゃんも食べるでしょ?」
「食べるけど、それ、2人だけで?」
「んーん。あと左之ちゃんとぱっちゃんも呼んでる」
「あ、そ。」
「久しぶりだねぇ、4人で集まるの」






ふふふと笑ったの顔には多分味見したのであろう、口周りに生クリームがついていた。 俺がそのことを指摘すると、は指で口周りをぬぐって、その生クリームを口に運んだ。 普段なら意地汚いとか言うところだけど、なんだかその姿が…その、うん。





えろい」
「何考えてんのか知らないけどへーちゃんのがえろい」
「いや、無意識でしてるのがえろい」
「なんかえろいえろいって男子中学生みたいだね、私たち」
「確かに」






ぷっ、と噴出して笑うは昔の面影を残しながらやっぱ大人になったんだなぁとか思った。 それは多分俺も、左之もぱっつぁんも一緒。なんとなく歳を実感した。(まだぴちぴちの高3だけどね) 歳の話で思い出した。そういえば、と言って手土産のスーパーの袋からチューハイとかの缶をごろごろ出した。





「うわ、不良だ」
「でもも呑むんだろ?」
「そりゃあ」
「よかった、4人分買っといて」
「え、これ4人分…?どう見てもあとプラス3人はくる計算だろ」
「2人も3人も変わんねぇじゃん。  まぁ明日休みだし」
「私バイトなんですけど」
「しらね」






もうこんなことできんのも今年までかもしんねーし、というとはちょっと淋しそうな顔してそうだねぇ、と呟いた。 辛気臭い雰囲気になりそうだったから、料理はこぶぞーと声をかけるともなんとなく察したのかはいはーいと元気よく返事をしてくれた。 俺達は来年卒業する。だから今年までってのは最後って意味も含んでる。は国立の中でもえらい大学に行ってしまうし、ぱっつぁんも確か地方の国立って言ってた気がする。 左之は就職先をもう決定していてあとは面接を受けるだけで、俺は近場のそこそこいい私立大への進学をもう決めている。 中学だと離れると言ってもそんなにだし、「また遊ぼうぜ」だけど今回ばかりはそうもいかない気がする。みんな、散り散りになってしまう。







「へーちゃん辛気臭い顔してんねぇ」
「うっせぇ」
「ね、ちょっとだけ飲んじゃおうよ。こんだけあるんだし、ね?」






俺は無言で肯定して、手始めにが冷蔵庫から持ってきたワインの栓をあけた。パン、といい音を鳴らしてワインが開く。 が俺の分をついで、俺がの分をついだ。どちらからとも言わず、ぐいっと飲み干す。 ふぅ、と息をつくとおっさんくさーいというの声が聞こえた。ワイン独特の酸味が口の中に広がって、なんだか大人な気分になった。









「別れってなんかいやだねー」
「仕方ねーじゃん。中学んときみたいに学区とか決まってねーんだし。」
「まぁねー…でもさ、」
「ん?」
「また会おうね」
「…あたりめーだろ」
「ふふふ、へーちゃん、酔ったら口悪くなるのなおした方がいいよ」








そう言っては笑顔でメリークリスマスと言った。俺も余計なお世話、と言ったあとメリークリスマスと呟いておいた。