ライス、彼が私の名前を呼ぶ。一日に何度訂正しようが、訂正したときしかなおらない。別れるときにはまたライス。 ちなみに私は誰かにライスと呼ばれたことはない。生まれてこのかた18年、まったくもって初めてである。 なので考えられるのは完璧に彼の聞き間違い、それか彼オリジナルのあだ名である。 「太子ぃ、なんで竹中さんは私のことライスって呼ぶんだろ」 「さぁ…しっくりくるからじゃないのか?」 「妹子がイナフなのはなんとなく納得できるんだけど、ライスて…」 「ちょっと、なんで僕のは納得できんのさ」 「何回も妹子とイナフって繰り返してみ、納得できるから。」 できるか!とつっこむ妹子はほっといてもう一度考え直す。ライス…うん、ライス。別に嫌なわけではない。でもやっぱり微妙だ。 彼が私のために考えてくれたあだ名ならまだ納得するけど、妹子の件からするとどうも聞き間違えという線が消えない。 うーん。好きな人にはやっぱり名前で呼んでもらいたいのだが。(多分彼はそんなことに鈍感だろう) 「あ、竹中さん」 「太子か。それにイナフも、ライスも」 「イナフじゃないです、妹子です」 「私もライスじゃなくてです」 「ははは、そうだったか」 「今ちょうど竹中さんのことを話していたんだ」 そういって太子がさっきまでの話題を身振り手振りしながら話す。そんなことしなくても、別に普通に話せばいいのに。 竹中さんはうんうんと頷きながら太子の話を笑顔で聞く。さらさら風にゆれる金色の髪が綺麗だ。(後頭部が少し気になるが) 「で、なんで竹中さんは妹子のことはイナフでのことはライスなんだ?」 「妹子のは太子が間違えたんでしょ」 「そうですよ。アンタのせいですよ」 「し、仕方ないじゃないか。妹子の名前覚えにくいんだもの」 「たしかに妹に子って読みにくいね。よし、芋の子に変えよう」 「勝手に改名すんな!てか話ずれてんだよ!」 「あ、そうだった。で、竹中さんなんで?」 困った笑顔で首をかしげながらこっちを見る竹中さん。あぁもうこの人かっこいいし、かわいいし、色々反則だ。 太子はなぜか私たち二人より興味深々な顔をしてるし、妹子はもういいという顔をしている。 私がどんな顔をしているかはわからない。 「好きな人の名前を呼ぶのってなんか恥ずかしいじゃないか。ねぇ?」 |