ごりっ 頭に無機質なものが当たる音が身体中に響いた。ぞくぞく、身体が疼いた。死ぬのかどうかなんてわからないけど、ただ、恐怖に平伏した。なぜ自分がこんな状況に置かれているか全く理解できない。理解したくも、ない。 「何で貴方がこんな目にあってるかなんて簡単ですよ、僕の嫉妬です。醜いですよね、人間って。 一度醜くなると、好きな人にさえこんなものを突きつけれるんですよ。 好きな人にこれを突きつけるのが、醜いかどうかは僕にはわかりませんが、 ただ嫉妬に狂う人間が醜いのはなんとなくわかります。 自分で自分自身が醜く思います。でもね、。僕を嫉妬に狂わせたにも非はあるんですよ?」 そう言ってがす、と胃のあたりを蹴られた。3日くらい何も食べていないので胃酸以外は何もでなかった。口の中がすっぱいのと鉄っぽいので混じって、もうなんだかよくわからなくなった。哀しいんだか、怖いんだか、もう一切の感情すらもなくなった感じがした。頭は朦朧として、思考回路は切断寸前。 「が他の男としゃべるのも、手を繋ぐのも、全部全部憎たらしいんですよ。は僕のものなのに。 でもはわかってない。鈍感にもほどがあるんです。度が過ぎます。 もうここまできたらが憎たらしくなってくるんです。 僕が憎たらしいのはじゃなくて、の手を繋いでしゃべっている男どもなのに。」 途中から鼻声になっているのがわかった。視界は血のせいで良好ではないので、彼のその顔も様子も汲み取れないが、聴覚から聞こえたものの勘(というのはおかしいのかもしれないけど)で、なんとなく泣いている気がした。でも彼が今までいたぶっていた私のために泣いてくれる、だろうか?僕はね、不器用なんです。彼は続けた。 「不器用だからこんな愛し方しかできないんです。バカでしょう。愚かでしょう。 こんな僕でもずっと愛してくれますか。嫌わないでいてくれますか。無理ですよね、ごめんなさい。」 私は、今までうめき声しか出なかった口を必死に開いて、声になっているかなっていないか、まさに蚊が鳴くくらいの小さな声で「私が、妹子のこと嫌いになれるわけがない」と言ってやった。彼は少し驚いて、でも笑ってみせた。 「ありがとう。」 彼はそう言うと私の頭から無機質なものを離した。私の手足を解放した。私の身体は全部がなくなったように軽くなる。その感覚と同時に、違和感を覚えた。ふと彼の方を見る。今まで私の頭に付きっきりだったものは、今は彼の頭の付いている。 3.2.1. (誤解は解けたけど、音を立てて全て崩れてしまった) |