「生まれてくる前からきっとその人の勝ち組、負け組は決まってたんです。現に僕は負け組みだ。」 「はぁ」 「だからきっと今こうしてる間に生まれてくる子供の中に宝くじを当てるものがいるとしたらきっとそれはもう決まってるんです」 「そうですか」 「だからそいつの産声はガッツポーズして喜ぶような産声ですよ。あぁ憎たらしい!」 「骸さんそれはただの被害妄「うるさい!だまりなさい!」 さっきからずっとこんな感じだ。 確か取り留めのない、今日の献立だとか千種の味付けの話とかを話していたはずなのに何が大きくずれてこんな変な話になったんだろうか。(もうお前、新興宗教でもつくっちまえよとか思ったのは秘密) 私は多分何を言っても無駄だと言わんばかりのため息をついて、骸さんの隣の席を外し、ぶーぶーうるさい冷蔵庫へ向かう。そしてオレンジジュースに手をかける。 こぽこぽと透明なコップの中がオレンジで埋まっていく間にも段々話は飛躍していって、もう何がなんだかわからなくなってきた。 「とにかく!僕は一刻も早くこの世界を、マフィアを殲滅し、掌握しなければならないのです!わかりますか?日和」 「わかりたくないです」 「あぁもう!君は人の話を全く聞かない子ですね。僕は君をそんな子に育てた覚えは無い!!」 「育てられた覚えがありません」 そう断言して私はオレンジジュースを一気飲みする。5月の中旬、まだ朝夜は寒いといえど、昼はもう長袖じゃ暑いくらいだ。今日も例外ではない。外には青く澄み渡った空。あの空だけ見れば夏だと思うくらいだ。 その微妙な暑さで火照った体に冷たいオレンジジュースが流れ込んだので、少しおなか辺りが疼く。こめかみも少し痛い。痛むこめかみを押さえながらこれじゃあ埒が明かないと思い、私は骸さんに向き直って言った。 「…じゃあ発想の転換をしてみましょうよ。」 「何ですかいきなり」 「骸さんは確かに今まで人の子のような扱いは受けてきてません。認めましょう」 「認められたって嬉しくないです、」 「でも、それを考えたら私や犬、千種に逢ったことも全部宝くじでいうはずれですか。」 「それは……」 骸さんは少し考えるような仕草をとって、ほんとうに聞こえるか聞こえないかの声で言った。 違います。 「でしょう?じゃあもうこの話は終わりにしましょう。私は千種に頼まれた買い物に行ってきますから」 そう言って極力下を向いてリビングを出ていった。 |